ひつまぶしっ!

一粒で三度おいしい、そんな創作ブログ。

ミンミンたんの短い夏・前編(虫嫌いな方は注意)

ミンミンたん1

夕刻、帰宅途中にセミの幼虫と遭遇する。
普通は日が沈んでから木を目指して地中から出てくるものであるが、
どうやら慌てん坊さんらしい。周りはコンクリや砂利道しか見当たらず、
羽化するにはあまりにも場が悪い。体は既に緑がかってきており、
羽化寸前といったところだ。おまけに周囲には黒アリが多数周回している。餌にされるのは時間の問題だろう。

これも自然の摂理ってやつだ。踵を返し、俺は帰路に歩を進めた。


↓続きまつよ↓ ミンミンたん2

そう本来なら簡単に見捨てる冷酷無慈悲な俺であるが、
餌になるのは役割を終えてからの方が道理というもの。
かわいそうだとか、そんなんじゃない。
ただ…不条理な死が許せないだけだ。
仕方ないので庭まで持っていき、羽化しやすい木を選んで放してやった。

俺はこのセミに「ミンミンたん」と名付ける事にした。
えっ、冷酷無慈悲なのに?
あと、静岡市街にミンミンゼミ、いないんですけど。
それはさておき、恐らく大きさからアブラゼミと推測されるが、
眠そうにヨタヨタしてるから「眠々」という名前は的外れとは言い切れない。


ミンミンたん3

女の子ならセミ世界では大変だ。
知っての通りセミは雄しか鳴かない。
鳴く事の叶わない彼女はひたすら待つか声を頼りに飛び回るしかない。
羽化した後の寿命は約一~二週間。無駄に時間を費やし、
お互い言語が使えるのにデジタルに依存する我々人間を、
彼女は羨むだろうか?それとも貶すだろうか。


そんな事を考えながら、ヤブ蚊100匹分に献血しつつ、
気付けば俺は彼女が無事に登りきるのを確認するまでその場でずっと見守り続けていた。かゆいかゆい。雄なら離れた所で鳴いてくれ、と自嘲の笑みをボコボコの顔に浮かべたつもりで、再び俺は闇へと熔けていった。


続く

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